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04 26
2005

手塚治虫ノスタルジア

『ナンバー7』 手塚 治虫


4061087932ナンバー7 (1)
手塚 治虫
講談社 1980-06

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 核戦争あとの地球とか侵略者とかの話がよかったな。黒のユニフォームがカッコよかった。ヒロインの女性が宇宙人のスパイだったというのはショックだった。不信と疑いという要素がこの作品を心に残るものにしている。荒廃した未来の地球という設定は少年にとっては悪夢のようにリアルだった。


04 27
2005

手塚治虫ノスタルジア

『火の鳥 1 黎明編』 手塚 治虫


4257987413火の鳥 1 黎明編 (1)
手塚 治虫
朝日ソノラマ 2003-04-01

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 死と不死の生命をもとめるという手塚治虫のライフワークである。ひとつの物語ごとに時代設定を過去や未来、歴史にもとめ、輪廻や孤独や生命力を描き、壮大な叙事詩になっている。

 この「黎明編」は卑弥呼の時代をとりあげ、クマソとの戦など古代史のロマンを駆り立てられたものである。

 主人公が不死の生命火の鳥を自分のものにしようと殺されるラストは衝撃だった。『火の鳥』全編にあらわれる猿田彦も殺されており、主役に思い入れをもっている読者には衝撃である。

 洞窟の中に閉じ込められ、それでも家族が何代も生き延びるエピソードには人間の生命力の強さや賛歌を感じさせるものだった。私のなかではこれほどくり返しながめたマンガはないだろう。


04 29
2005

手塚治虫ノスタルジア

『ブラック・ジャック』 手塚 治虫


4253031609ブラック・ジャック (1)
手塚 治虫
秋田書店 1974-05

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 いまの若い人にとっては手塚治虫といえば、『ブラック・ジャック』になるのだろうか。アニメにもなっているし。

 ブラック・ジャックは天才的な手術の腕をもちながら、巨額の手術料を請求するという非情な無免許医師である。大金を請求するから、金より大事なのは生命という、こんにちの生命より金が大事という風潮に対する風刺になっている。

 また法外な手術料を請求するために人情や金より大切なものが問われることになる。大金が惜しくないほど生命や人とのつながりが大切なのかと踏み絵を踏まされるわけである。ブラック・ジャックはときには手術料をいっさい請求しなかったり、無料で手術したりするのである。そこに毎回感動のドラマが生み出されるのである。

 一話完結の物語で、泣いたり、笑ったりするひじょうに内容の濃い短編となっており、感情の高まりを感じない作品はほとんどないといっていい作品である。


05 01
2005

手塚治虫ノスタルジア

『奇子』 手塚治虫


4061087975奇子(あやこ) (1)
手塚 治虫
講談社 1981-08

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 手塚が健全な少年マンガ家のイメージをかなぐり捨てて、思い切りダーティな大人の劇画を書いてみたくなった作品のように思える。

 戦後まもなくの東北の封建的な旧家を舞台に描いており、父親が息子の嫁を手玉にとったり、奇子という娘を生ませたり、兄がその土蔵に閉じ込められた奇子と近親相姦したり、犬猫のような性愛関係は、少年だった私には煽情さをウリにした物語に思え、冷めた目でしか見れなかった。

 深読みすれば、子どもは出自が明確でないと許せないという近代核家族の皮肉にも思える。経済と所有関係がげんざいの性愛関係を規定づけているが、人間はそれだけの存在でないことを知らしめている。

 敗戦後のGHQや下山事件が背景となっているが、この天外一族とのかかわりが必然だったのかは私には読めない。

 あまり感動や希望をあたえる物語でもないし、読後感がいい作品でもない。ただ丸っこい子供向けのマンガばかり描いていた手塚からすれば、リアルな背景や劇画的な人物像の達成は手塚の画へのこだわりの頂点ともいえる。この点は私は好きだ。初期の作品もこんなタッチで描かれていたらどうなっていただろう。


05 01
2005

手塚治虫ノスタルジア

『火の鳥 4 鳳凰編』 手塚 治虫


4257987448.jpg火の鳥 4 鳳凰編
手塚 治虫
朝日ソノラマ 2003-05-02

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 マンガ喫茶で再読してみたが、すさまじいものがあった。波乱万丈というか、慟哭するというか、ものすごく圧倒されるものがあった。『黎明編』も好きだが、この『鳳凰編』もかなりの傑作である。

 むかし読んで忘れられなかったシーンが、片腕のない我王(猿田彦の生まれ変わり)が囚われて両腕を縛られながら、口だけでメシをがつがつ食うシーンだ。記憶では腕を切られたあとのシーンだと思っていたが。犬のような生命力のすごさを感じたものだ。

 おそらくこれは芸術と権力のテーマが語られていると思う。いや、それ以上にそれらをめぐる生き方の問題、生命とはなにかというテーマが中心を貫いている。

 身体の欠損の差別ゆえに殺人鬼になる我王が、良弁という僧に助けながら生命の輪廻を悟るまでの様と、謙虚に芸術を極めようとしていた茜丸が大仏建立という権力にのみこまれてゆく様を対比として描いている。

 なによりも我王の物語がすさまじい。人を殺しておきながら助けたてんとう虫に慕われて速魚という人間の女として我王につれそうのだが、疑いから殺してしまう。良弁という僧が諸国遍歴の旅に我王をつれだし、石仏をつくりながら自分や生命と向き合い、悟ってゆくエピソードは感動的である。それにしても悟った生命の輪廻とはなんなのだろうか。

 この物語では大仏建立を権力に宗教が利用されていると批判していたが、げんざいの仏教も仏像と建築の見かけのものばかりになってしまい、中身がてんで伝わってこないのは嘆かわしいことだと思う。仏教は心理学的にも読めると思うのだが、知識として利用されていないのである。『火の鳥』の輪廻観は物語としてはおもしろいかもしれないが、輪廻が現実に存在するとはいまの私には思いがたいが。


05 03
2005

手塚治虫ノスタルジア

『キャプテンKen』 手塚 治虫


4061086251キャプテンKen (1)
手塚 治虫
講談社 1978-01

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 このマンガは好きだったなあ。火星という舞台に魅かれた。主人公が女だったという設定にはがっくりきたが、火星というSFがよかったなぁ。

 それにしても内容のほうはきれいさっぱり忘れてしまっている。好きな印象は残っているんだけどなぁ。。。 残念。

 のちに再読してみてキャプテンKenがめっぽう強い西部劇的ヒーローであったことから魅かれたことがわかった。少女が正体を隠しながらKenになるところもよかったのかな(正確にはその子ども)。Kenは植民地化された火星人の味方になっており、深い見方をすれば大日本帝国の侵略をテーマにしているとも読めるし、あるいは善人面したイデオロギーと読めるともいえる。


05 04
2005

手塚治虫ノスタルジア

『シュマリ』 手塚 治虫


4061086979シュマリ (1)
手塚 治虫
講談社 1978-10

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 北海道開拓史を背景に描かれた手塚の大人のマンガである。しかしシュマリは裏切った女を追いかけて北海道までやってくるが、人を殺しまくったり、田畑を耕したり、牧場をはじめたりして、未開の地を懸命に生きる様は見ていてたくましいと思うのだが、ひじょうにあいまいな存在に見える。

 西部劇のようなフロンティアとしての北海道を描くわけでもないし、ガンマン的要素もあるのだがアイヌはもちろん悪役として出てくるわけもないし、侵略されたアイヌ側からの視点で描くわけでもない中途半端な物語に思える。ただ流されるシュマリの姿が描かれているだけに思える。

 ラストにはシュマリが育てたアイヌの子が日露戦争に駆り立てられ、満州でシュマリと会うように、手塚は植民地化をはじめた近代国家の起源を北海道に見いだしているわけだが、ストーリーからはなかなかそのメッセージが読みとりにくいように思われる作品だった。

 背景にていねいさ、きれいさには魅せられる作品であったが。


05 04
2005

手塚治虫ノスタルジア

『火の鳥 2 未来編』 手塚 治虫


4257987421火の鳥 2 未来編 (2)
手塚 治虫
朝日ソノラマ 2003-04-01

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 人類が滅んでしまったあとも生命の進化が描かれる壮大な物語である。なめくじの高等種族が文明を築き、奢りたかぶり、さいごには滅んでしまうエピソードは印象的だった。

 主人公マサトはムービーという生物による幻想を夢見たり、猿田博士は絶滅した生命を再生することに情熱をそそぎ、わずかにのこった地下都市もコンピューター同士の争いにより人類は滅亡してしまう。ペシミスティックな未来編である。

 火の鳥に永遠の生命をふきこまれたマサトは五千年を生き、そして生命の再生を数十億年見守ることになる。人間の物語を超えて、生命の進化が相対化されるのである。

 この物語は私はあまりあまりおもしろみがなくて好きでもないのだが、人類という生命の種を相対化する視点は見るべきものがあると思う。

 アニメのオープニングです。(YouTube)


05 06
2005

手塚治虫ノスタルジア

『紙の砦』 手塚 治虫


toride1.jpg紙の砦
手塚 治虫
大都社 1987-05

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 手塚治虫の自伝的作品がおさめられた本で、どれもこれも感慨深いものがある。

 『紙の砦』では爆弾が落ちてくる軍需工場でもマンガを描いていた手塚が宝塚をめざす女性と仲良くなるのだが、彼女は空襲で顔を負傷、戦争が終わって手塚はマンガを描くぞーと泣いて喜ぶのだが、彼女のほうは――という作品。

 『すきっ腹のブルース』では敗戦後のマンガが売れ出したころの手塚が色気より食い気に負ける作品、『トキワ荘物語』では石森章太郎とか藤子不二雄が住んだあのアパートの物語、『がちゃぽい一代記』では貧乏でやせ衰えたマンガの神様が出てくる。

 いずれも手塚が主人公の物語で、手塚がどんな人生を送ってきたか、フィクションであるだろうけれども、魅力的に描かれた愛すべき本である。


05 06
2005

手塚治虫ノスタルジア

『どろろ』 手塚治虫


4253062571どろろ (第1巻)
手塚 治虫
秋田書店 1974-09

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 父親の出世欲のために魔物に人体の48ヶ所を奪われ、妖怪を倒すことによってとりかえすという百鬼丸のストーリーは、親によい大学よい会社と脅迫される物語とも読むこともできるし、天下どりをめざした国家への復讐劇ともみなせる。ただ倒してゆく妖怪にはそのようなテーマがこめられている気配はまるでないが。

 この物語は水木しげるの妖怪モノをとり入れたり、時代劇の渡世ものを匂わせるものなど、時代の流行りものをご都合主義的にとり入れていった手塚の姿勢がうかがえるのだが、なんでもギャグにしてしまう手塚治虫のことである、それもギャグになるだろう。

 よくいわれるようにこの物語はどろろの物語というよりか、百鬼丸のほうがだんぜん魅力的で主役級である。なぜ、どろろなのだろう、理由はあるのだろうか。どろろも権力を倒すための軍資金の地図が背中に彫られている。ふたりで力とたたかう物語であるということか。やはりどろろである理由はわからない。

 アニメのオープニングはこんな感じだったそうです。白黒です。YouTubeから。


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プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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