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2014

書評 労働・フリーター・ニート

どうすれば自分らしく働けるか――『人生後半を面白く働くための本』 小川 俊一

4532191327人生後半を面白く働くための本 (日経ビジネス人文庫)
小川 俊一
日本経済新聞社 2002-06

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 「仕事がおもしろくない」、「自分らしく生きていない」といった悩みをもつ方にはひとつのヒントをもたらす本。

 内発力をいかにひきだし、合わせてゆくかということになるか。

 仕事は外から注文されるもの、外発力になってなされるもので、「人のため」「他人の求めに応じて」「相手の役に立つ」という外からの求めに応じて自分の能力を提供して、注文主の望む結果を出そうとすることである。対して、自分の好きなこと、おもしろいことは内発力によってなされることで自分の満足をひきだそうとすることである。

 人は仕事や注文の求めに応じて、自分を殺して、求められることだけに合わせる。そのうちに「自分らしくない自分」「自分ではない自分」といった人生に慣れて、自分らしさ、自分がほんとうにしたいことを忘れていってしまう。もしくは織りのようにたまってゆく。

 その自分らしさ、自分のやりたかったことをどうやって世の中に合わせてゆくかということが、この研修講師やコンサルタントとして50代で独立した人の経歴を語りながら、披露されてゆく。いや、この人自分の好きなことをやる経歴にめぐまれすぎていたんだけど。。とため息つきたくなるのだけど、それはさておき。

 著者の経歴は映画のコピーライター、市場会社で雑誌の編集、繊維会社で宣伝部、営業、調査研究所、財界の広報センターといったクリエイティブな職場をわたってゆく。そして54歳にて研修や教育の講師として独立する。そのなかで人の求めに応じること、自分の好きなこと、やりたいことが煮詰められてゆく。

 好きなことがあって能力があれば、仕事として求められ、求められることによって能力がもっと上達してゆく。そういったサイクルの好循環がはたらけばいい。

 でも若いときにはわからず、あとになって向きや好き嫌い、適合が見えてくることもある。長くやってみないと見えてこないこともあるのだ。向いていると思っていても向いていなかったこともある。向いていなかったと思っていたのに、向いていたばあいもある。人は自分のことをなかなか知りえないのである。

 いちばん最悪なのは、仕事は「やらされるもの」「強制」されるものと思い込んで、いやいややりつづけることだろう。でもこれがお金のため、生活のために働かざるを得ないおおぜいの人の現実というものだろう。おもしろさとか自分らしさにこだわったら生きてゆけないといった隘路が待ちかまえているかもしれない。著者の来歴はあまりにもめぐまれている。

 「やらされている」なかでも、だれにも侵されない自分の領域をつくってしまう、これをゲームだと思ってしまうといったやり方もある。いやいやなら奴隷労働だし、自発的にたのしめばゲームだ。これはわたしも感じるところで、自己裁量の多さ・少なさが仕事のやりやすさとか充実・不満にかかわっていると思う。

 自分らしい仕事をする、自分の好きな人生を生きる、ってことはそうかんたんにはつかめない。求められること、必要とされることが自分だと思い、自分そのものだと思い込みつづける人だっているだろう。わたしなんて自分の好きなことの職につけたこともなくて、能力がなかったり向いてなかったりして身銭のためにいやな仕事ばかりしている感にひたすら耐えているだけである。解放されたい。


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11 17
2014

右傾化再考

あまりにも知らないので一読――『「在日コリアン」ってなんでんねん?』  朴 一

4062723468「在日コリアン」ってなんでんねん? (講談社+α新書)
朴 一
講談社 2005-11-18

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 いつか在日朝鮮人についてはくわしい本でも読まなければと思っていて、この本を手にとってみたが、そういう初心者にとっては政冶的な権利獲得の話が多い本書はあまり興味をひかれるものではなかったかもしれない。まずは在日朝鮮人が生きてきた苦難や差別の歴史を知るほうが先決だっただろうか。

 ヘイトスピーチや嫌韓本があふれる昨今、この本が出た2005年からは状況がだいぶ変わっている。その後、韓流ブームや白昼堂々、コリアンタウンでヘイトスピーチがくりかえされるなど、対朝鮮感情はアップダウンをへている。日本人が民族感情によって自尊心をとり戻そうとすればするほど、日本にいる他民族が浮上してくる。嫌韓本の氾濫によっていっぱんの日本人にどのような感情が醸成されることになるのだろうか。

 この本の冒頭は日本で活躍してきた有名人のうちの在日人をとりあげている。力動山などは戦後日本の復興をささえたのだが、在日人だったのであり、戦後の人たちは日本人を応援していたのだろうかとなる。近ごろでは右傾化に走っていたやしきたかじんのカミングアウトといった例もある。

 芸能人のなかにも多く在日人はふくまれており、芸能という仕事は差別や周辺の追いやられてきた人たちのハングリー精神や上昇志向の受け皿となってきたといえるかもしれない。表舞台に立つ憧れられる人たちは、周辺や差別の底辺から立ち上がってくるというのは、ひとつの図式として定番のものなのだろう。ふつうにのん気に生きてきた人はハングリー精神も競争精神もそう激しくならない。いまは沖縄の芸能人進出もめだつ。

 著者は『僕たちのヒーローはみんな在日だった』という本も書いており、芸能人や有名人の違った面を見れるかもしれない。ヘイトスピーチや嫌韓がさかんになるげんざいの状況をどう思っているのだろうか。

 けっきょく日本人は出自を明かさないと朝鮮人かも区別はできないのである。顔かたちで識別できない。国境とか国人というのはどこを見ても見出されるものではない。人は個人であって、その人となりであって、国家や政治を背負って、毎日や人生をおくっているわけではない。たいてい個人であり、政冶的・国家的でもない、ただの私生活者である。国家や国境のくくりで人を判断するのは、あまりにも「観念的」であり、「現実的ではない」といえるのではないだろうか。

 わたしとしては職業や就職で苦労してきた在日人がどのように苦難の人生を生きてきたかといった歴史のほうが興味をもてたように思える。あまり恵まれた職業人生を送ってきたわけではないわたしにとって、参考と共感ができる歴史と思うのである。

 ヘイトスピーチや嫌韓は、非正規や下流のグローバルな低賃金労働におびやかされる脅威からおこっているという見解があるが、排斥感情がおこるというより、共感や同情の気持ちがわきあがってきそうに思うのだが、どうなのだろうか。

 在日朝鮮人は日本人がやりたがらないような底辺労働でも低賃金で働かざるをえなかったのであり、大正や昭和の労働争議でも朝鮮人がいつまでもあきらめずに闘いつづけたという話も聞いたことがあるし、わたしには排斥感情より、共感のほうがわきあがりそうに思うのだが、違うのだろうか。つぎはこういった朝鮮労働者の苦難の話を中心にした本のほうを読みたい。


僕たちのヒーローはみんな在日だった在日一世の記憶  (集英社新書)在日の耐えられない軽さ (中公新書)韓国のイメージ 戦後日本人の隣国観 [増補版] 中公新書在日コリアン女性20人の軌跡


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11 14
2014

右傾化再考

尊厳の回復の道すじを――『ナショナリズムは悪なのか』 萱野稔人



 右傾化は、社会的排除による「尊厳の回復」をめざしているのだという指摘をうけて、そちらの回復の道すじについて考えたくなったのに、基本にたちかえって国家とは、ナショナリズムとはなにかと問う本文はほとんどどうでもよいことのように思えた。

 社会的排除されていった人たちへの尊厳の回復はどうやってなされるか。そちらの問いのほうが気持ちのうえにずっしりとのこった。

 この本はタイトルのとおり、左翼陣営からなされるナショナリズム批判にたいしての根本的な嫌疑をはさむ問いかけになっている。ナショナリズムを批判しておきながら、格差の是正を国家にもとめるのは左翼ではないのか。アナーキズムで国家を否定しても、独占暴力はかならず必要とされるのではないのか。左翼陣営の根拠なき思い込みの根源を問いなおす作業をおこなってゆく。

 さいしょの問いのインパクトに比べれば、そういった問いなどてんで重要に思えない。そもそも日本で軍国主義がそんなに警戒されている理由をまったくすっ飛ばしている議論に思える。戦後の日本の議論の接続がなくて、著者お得意のフランス思想戦隊がいきなり飛来してきた感じw ナショナリズムの立ち上がった経緯、フーコーの近代化論など、さいしょの問いかけに比べて、かすんで仕方なかった。

 「国内経済を保全するというナショナルな経済政策が、国民国家をファシズムに向かわせないためには不可欠なのだ」というのが著者の立場。

 ナショナリズムを生理的に嫌っておきながら、国家に依拠するのはおかしい、ナショナリズムを批判すればするほど経済や尊厳の回復を必要とする人がふえるのではないかといった生理的左翼にたいする根本的な懐疑。「他者性の抑圧」を道徳的に非難しても問題がズレていますよという指摘。まあ生理的に反発するのではなくて、足元をもういちど見直してみようという提言。

 いや、やっぱり社会的に排除されたり見下げられてきた非正規や地位低下に苦しむ人たちの尊厳や自尊心の回復はなにによってなされるのか、そちらの問題のほうが気になって仕方がない。おとしめられた尊厳という問題を軽んじてきて、ナショナリズム批判だけに傾きがちだったわたしにインパクトを与えてくれた。


民族とナショナリズム定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)ネイションとエスニシティ―歴史社会学的考察マルチチュード 上 ~<帝国>時代の戦争と民主主義 (NHKブックス)監獄の誕生―監視と処罰



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世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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