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09 14
2019

幻想現実論再読

ふつうの人の悟り――『わかっちゃった人たち』 サリー・ボンジャース 編

わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと
サリー・ボンジャース 編
ブイツーソリューション



 神秘思想の探究は一時停止しているが、この本は気になっていたので図書館で借りた。

 ふつうの人が悟りをどう語っているのかという興味だ。7人の人たちの話が紹介されている。いずれも精神世界、神秘思想の探究はおこなっていて、なにも知らずにいきなり悟ったという話はない。幾人かの師にも会った人が多く、トニー・パーソンズに会った人が多い界隈のようだ。

 だいたいは私もわかる話をしているのだが、いくらかは私にはわからない話もあった。私は知的・概念的に理解している部分が多く、感覚的に悟ったという経験はしていない。そういうぼこっと脱落するような経験をするものなのかな。

「分離という中心的な思い込みの本質がいちどでも見抜かれれば、それで全部です。いちど見抜かれたら、それは見抜かれたということなんです。それでおしまいです」



「もしその頭の中のイメージが消えたら、ここにはほんとうは誰もいないんだということがわかります。僕の場合、まさに文字どおり身体が消えたんです」



「なんてこった!今までなんで気づかなかったんだろう? 何をどうしたらこのつまらないちっぽけな奴と同一化して、ずっともがき続けてこられたんだろう?」

 

 分離とか、だれもいない、身体もないということを、私は理解しているわけではない。このへんの認識が私にはまだ足りないようだ。

 言葉や思考がつくりだす幻想や非実在性ということには、だいぶ理解を増したと思う。過去が存在しないという実感もちゃんともっている。だいたいはこのふたつの認識の誤りを克服することで、悟りには近づけたとは思うんだけど、上記の部分では実感をしっかりもてているわけではない。

 人は言葉と思考というシステムで、この世界の認識のほとんどをまかなってしまう。この思い込みをひきはがすことが、神秘思想のまず最初のステップになる。しかしこの思い込みの強固さと、ほかにオルタナティブがあるという視野の欠落は強固である。この部分をのりこえることが、たいがいの人には思いもしない世界なんだろうと思う。これはそうとう難しい最初のステップだと、つねづね思う。

 ちょっと日常のトラブルとかあって、思考の脱落を願う場面があって、また神秘思想の探究にもどりたい気持ちになってきた。非二元とかアドヴァイダとか最近の動向を追ってみたい気持ちがわいている。トニー・パーソンズ、ダグラス・ハーディング、アジャシャンティティとかいった人たちだろうか。

 神秘思想のさいしょのきっかけの本に出会ってもう二十年になる。リチャード・カールソンの『楽天主義セラピー』なんだけどね。


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09 08
2019

人生論

底の抜けた死後観――『死後の世界』 立川 武蔵



 立川武蔵は、仏教を中心に東アジアの宗教をはばひろく研究した人なのかな。空関係の本を読んだかな。

 この本では、「なぜインドには墓はないのか」といったことや、「輪廻について」、「草や木に成仏はできるのか?」、「死は終わりなのか?」といったテーマで語っていたので、興味をもった。

 インドに墓がないという話を読んでいて思ったのだが、私個人には墓や遺骨に死者が宿るという観念がまったく根づいていない。死後や極楽の世界観もリアルと感じたことはまるでないし、自分自身の死後観をしっかりと組み立てないと、ちっとも死者を弔う儀礼によりそうことができない。このラディカルすぎて、底が抜け抜けた死後観に、いったいどんなかたちを与えればいいのだろうと思う。

 地方ではなく、郊外のベッドタウンで生まれ育った人はだいたいこんな風な底の抜けた死後観をもっているのではないだろうか。先祖のつながりも途切れ、死後の魂観も抜け落ちている。死者を弔う中身がまったく欠如した状態だ。戦後の無宗教者は、いったいどんなふうに人の死に向き合えばいいというのか。

 輪廻の世界観も、物語やテレビなどでたまに見聞きすることができるが、それをどこまで信じているかも疑わしい。オカルトの扱いだし。仏陀は輪廻からの解脱をめざすと説いたのだけど、現代ではどちらかというと輪廻や生まれ変わりがあってほしいという願望だけが、宙に浮いているのではないだろうか。

 古来の仏教儀式がのこっているにせよ、サラリーマンや都市消費をおこなう人にとって、宗教や死後の世界はもう身近に感じられない世界だ。このかたちだけが残り、中身がすっかり空虚に、からっぽになってしまった死後観に、どうやって人の死や自分の死に向き合うつもりなんだろう? どちらかというと、形だけをすまして、日常の生活に戻ってゆけばいいという現実主義だけで、死に関わればいいと思っているのだろうか。死の関わりがすっかり底を抜けてしまっている。

 草木の成仏など、現代人にはまったく論外の問題だろうが、区別も境界もないワンネスの世界をどう理解したらいいのかという点からだけ、私の興味をひいた。

 現代人は、人の死を弔うことのできないところまできてしまっている。魂や死後を信じずに、どうやって墓や葬儀の気持ちをこめておこなえるというのだろうか。故人の思い出や記憶が、その座にすわることになっているのだろうが、死後の世界の欠落は、墓や葬儀の形式もどんどん落としてゆくことだろう。あまりにもこの問題を棚上げしているように思われる。


人は死んだらどこに行くのか (青春新書インテリジェンス)葬式は、要らない (幻冬舎新書)もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない (幻冬舎新書)図説 死の文化史―ひとは死をどのように生きたか


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09 07
2019

人生論

現代人にはもう信じられない――『東洋における死の思想』 吉原浩人編

東洋における死の思想
吉原浩人編
春秋社



 東洋のみならず、キリスト教、イスラム教もふくめた世界の死の思想を概括できる書である。

 第一部にはそのような宗教の死の思想の概括、第二部には日本人の死の思想にしぼって説明されている。

 読後感としては、茫漠としているな。世界の死の思想を概括的に見ても、「ふうん」くらいにしか思えないし、世界の思想をならべられても頭がごちゃごちゃしてきて、しまいに各思想の違いや区別もできなくなってくる。日本人が仏教や神道の死の思想で大半をいろどられているにしても、キリスト教の思想も混入してきて、あまり区別ができないような状態にもどるだけだ。

 現代人は、そのような宗教の死生観をもてずに儀礼だけを守り、中身は形骸化している状態にある。宗教の死後の世界を信じたり、現実にあると思えるようにはなっていない。

 私たちは死後の世界を捨てるのか、そうすれば、私たちの生きている意味や価値も変わってくるし、人生の目標や目的も異なってくることだろう。死後から規定されていた人生観が、ごっそりと変わる際にわれわれは生きているのだが、そのへんをあいまいにしてまま、儀式だけを残し、われわれはこの生を生きる中途半端な状態にある。

 もうこのような宗教の死後の世界を信じられない観念の中で生きておりながら、かといって形式には頼ったままだし、思い切りをもってこの一度だけの人生を生きる覚悟も決心もつきかねる状態にある。どうするんですか状態のままである。

 ふだんはまったく宗教的世界を生きていないのに、だれかが死ねば宗教的儀礼をあいまいに利用する。死後の世界を信じているわけではないのに、墓や信仰の世界を間借りして、おざなりに死と向き合う。というよりか避けて通る。儀式は、われわれが明確に死と向き合わないための壁や障壁としてだけ利用されているのではないのか。

 この本に出てくる浄土や、天国や地獄なんて、もうわれわれはどれだけ信じることができるというのか。それだけむかしの人の死の思想・宗教は、われわれには縁が遠い状態になり果てている。死後の世界を失えば、葬送にしろ、人生観にしろ、大幅に改定しなければならないはずなのだが、われわれはあまりにもその問題から目をそむけている。

 死んだら終わりの人生観で、葬送や自己の人生の向き合い方をどうするんですか。個別にだれかの死をきっかけに、そのような問題に向き合わされ、ただ茫然と立ちつくすしかないのである。自分の番がきたときに、心構えを整えられているだろうか。



死を考える100冊の本日本人の死生観を読む 明治武士道から「おくりびと」へ (朝日選書)(116)死に逝く人は何を想うのか 遺される家族にできること (ポプラ新書)新版 死とどう向き合うか日本人の死生観 (ちくま学芸文庫)


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世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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