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01 27
2015

書評 心理学

不安の対処法――『不安、ときどき認知療法 のち心は晴れ』 ジュリアン・バター

4791102614不安、ときどき認知療法 のち心は晴れ
―不安や対人恐怖を克服するための練習帳

ジュリアン バター Gillian Butler
星和書店 1993-10

by G-Tools


 不安のただしい対処法をご存知だろうか。不安を誤まってあつかうと身体症状が危機的なものに感じられ、その行為、場所を避けるようになり、生活が制限されるといった悪循環をまねくことになってしまう。そういった落とし穴に落ちないためにだれだって不安のコントロール法、マネジメントが必要である。

 この本は120ページほどの薄い小冊子で、一部は不安のコーピング、二部は対人恐怖のコーピングに分かれていて、内容はほぼ同じようなプログラムが書かれている。

 リラックス法、注意の拡散法、回避行動にたいする段階的学習法、動揺したときの思考内容といったものが紹介されている。

 不安というものは、不安を悪化させるような破壊的な思考が、瞬間的に無自覚に去来するものである。現実離れした誇張されたパターンやなにもかも悪い方向にいってしまうと思ったり、ものごとの悪い面ばかり見てしまうものである。

 そのことによって体内の臓器は動きをはやめ、たたかうか逃げるかの行動のスピードを決断し、反応をすばやくする。危機感を自分でも知らずに思考が煽り、驚いて逃げ出そうと身体をせかせる。だけれど、わたしたちの社会はストレスや不安な状況から逃げてよい社会でも状況でもない。心臓の動悸、発汗、ふるえ、緊張を隠して、人に見られてはならないと思う。そのことによって症状に注意することによって、ますます緊張やパニックが昂進されることになってしまう。症状への注目はその症状を増進させるからである。

 このプログラムでは、だから不安の症状はなにも異常時ではない、ごくふつうの身体症状なのですよとなんども説かれる。心臓がどきどきなっても運動以上の害をなすことはない、身体的に実害をこうむることはない、不安症状で死んだ人はいないと説かれる。

 避けたり、逃げたりするとよけいに恐くなってしまう。恐ろしさがふり積もってしまう。症状に注意を向けなければしぜんと去ってゆくものである。症状についてあれこれ考えるとよけいに悪くなる。だからそれについて考えないことを決意し、注意の拡散法をつかって、思考をそらす。身体症状を恐れるに足りないものと理解できれば症状に注意せずにしぜんに去ってゆくのに任せられるようになるだろう。しかしそれを避けて恐ろしいものと認識してしまうと、恐ろしい避けるべきものはどんどん増えていってしまう。

 不安による緊張状態というのは自分で恐れさせる認識を自分でふり撒いて自分を恐れさせ、自分で身体を脅かせ、逃げるか闘うかの原始的反応状態にしておきながら、自分自身でそのからくりや解除方法を知らないという暴走機関のようなものである。怖れのふりかけを自分で撒いておきながら自分で知らない、自分で息をつめて逃走準備をととのえているのに気づかない、哀れでおびえた子羊のようである。ナイフをふるって脅かす自分の存在に気づかないピエロのようなものである。

 まずは緊張したとき、動揺したとき、思考がどんなに破壊的で破滅的になっているか、自分で気づいて変えていかなければならない。自分がそんなふうに考える証拠はあるのか、なにかもっと自信のつく考えはないのか、最悪の可能性や最善の可能性はなにか、ひと足飛びに結論に飛躍してないか、誇張していないか、なにができるかといった、自分を恐れさせる思考と対峙や消去していなければならない。

 人は自分を脅かすと息をつめて、呼吸を浅くして早くする。身体が逃げるか闘うかの反応をするためである。息がつまるととうぜん体に酸素がいきわたらず、ふるえや動悸、めまいなどおこるのだが、それが恐怖の対象になったり人目を避けようとして、不安の増殖がおこってしまうのである。また症状に注目したり、抵抗すれば、症状は昂進する。身体が恐ろしい状態になっていると恐怖に駆られて、よけいに恐れさせるエネルギーも追加することになる。

 不安や恐れ、パニックというのは、勘違いや無知、身体の機能を知らないことによる錯誤としかいいようがないのかもしれない。そして自分を恐れさせる思考や心のつぶやきといったものの自動性や無自覚さによるものといえるかもしれない。また自分が脅かして身体を恐慌状態にしておきながら、その危機的状況に恐れるといった二重の悪循環を不幸にももっているものである。

 身体がもう脅えている、恐慌状態になっているときには、思考は恐怖思考、せっぱ詰まった考えしか導き出さないものである。身体自身から、胃腸から、胸の息苦しさから、いたるところから不安感や恐怖感がわいてくるようなものである。身体は警告や脅威をサインしつづけるからである。しかし状況にはそんな状態にないことがわかっていても、いちど恐怖に条件づけられた身体は、恐怖を発信しつづける。人間の想像力とは皮肉で無意味な恐れをよく自己洗脳するものであると思う。

 まとめると不安の対処法は、身体の不安状態はふつうの身体感覚にすぎず、害があるものではない、これに恐怖を感じて回避するとますますその場が恐いものに感じられてしまうという皮肉な結果におちいる。症状に注意を向けるとよけいに症状が悪化するので、注意を向かわないようにすれば不安や症状はしぜんに消え去ってゆくものである。それと息をつめて逃げ出すような体勢をとっているので動悸やふるえがおこるが、腹式呼吸でリラックスする練習と習慣が大事だということである。

 対人恐怖症にリラックス法や思考の拡散法、段階的学習法など不安のマネジメントと同じ手法がつかわれているが、症状に固執すること、または思考のゆがみや自信の喪失などがその本質だと思うので、この凝り固まった絡まりを解きほぐせるのかと思ったけど。



不安な心の癒し方不安もパニックも、さようなら 不安障害の認知行動療法:薬を使うことなくあなたの人生を変化させるために不安に悩まないためのワークブック―認知行動療法による解決法不安・恐怖症のこころ模様 パニック障害患者の心性と人間像 (こころライブラリー)不安障害の認知療法―科学的知見と実践的介入


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01 21
2015

セラピー・自己啓発

効力ありませんでした――『一生折れない自信のつくり方』 青木仁志

4902222795一生折れない自信のつくり方
青木仁志
アチーブメントシュッパン 2009-11-25

by G-Tools


 どうなのだろう、わたしにはぜんぜん効力のない本に思えた。セールスのための本であって、心理学的な人間的な成長を示唆した内容でないかもしれない。

 著者がおすすめする本はナポレオン・ヒルやロバート・シュラー、ウェイリアム・グラッサー、ブライアン・トレーシーといった人たちで、まあこういった内容である。

 自信というのは「自分の価値や能力を信ずること。自己を信頼する力」といわれており、解釈や思い込みであり、自信の有無を決めているのは、ほかのだれでもない自分自身であると指摘されている。「自信がある」と思えば存在し、「ない」と思えばなくなる。そういったものなのである。

 願望をはっきりもっている人は強い意志をもって迅速・確実に行動する。ぎゃくに願望や欲をもっていない人は、「わたしなんか何をやってもダメだ」と思い込み、なかなか行動にうつせない。願望や目的をもつことがいかにたいせつか。

 自信は自分の思考が実現すればするほど大きくなる。それまでできなかったことが学習や訓練によってできるようになった。こういう成功体験、突破体験をしたときに小さな自信が生まれ、くりかえすことによって大きな自信につながる。小さな達成経験をつみかさねることが自信をつくるのである。

 「逆境は幸せの前奏曲。あらゆる逆境には、必ずそれと同等か、それ以上の成功の種が隠されている」。「新たな逆境が訪れると、「おお、またチャンスが来た」と思えるようになります」。これはたしかに思えるのだけど、逆境もまた苦しいものである。

 どうなのだろう、自信をつける本は認知療法のような心理学の本が合っているのかな。


自信をもてないあなたへ――自分でできる認知行動療法自信をもてない人のための心理学小さなことに左右されない 「本当の自信」を手に入れる9つのステップ (大和出版)自信を育てる心理学 「自己評価」入門まずは、自信をつけてしまえ!


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01 17
2015

書評 心理学

初歩的解説書――『不安症を治す』 大野裕



 対人不安や人前に出る不安のつよいことをさいきんは「社会不安障害」とよぶようになったが、性格の問題と考えられてきたが、医療で治せるかもという意味で用いられるようになったらしい。

 著者は認知療法の第一人者ということだが、認知療法では対人不安の考え方をどのような修正するのだろうか。

 不安に悩む人は、「現実を実際以上に重くとらえすぎて苦しんでいることが多い」といわれている。「いちばん危険なところは自分の頭のなかだと気づくことだ」。

 自分をいちばん批判しているのはまわりの人ではなく自分自身なのである。そのような考え方を修正させるのが認知療法である。

 不安な人は思い込みがつよく、パフォーマンスの期待値をひじょうに高く設定していたり、自分の行動のせいによってよくない結果をひきおこすと思い込んでいたり、「わたしはダメな人間だ」といったように自分自身の人間性まで否定していたりする。

 自分のことばかりに目が向きすぎて、しかも「よくないこと」ばかりに向ける。不安が強くなるとちょっとした危険でも見逃さないようにしようとするからだ。

 そうすると現実のうけとり方が極端になり、自分の心の中がそのまま他人につたわっていると思ったり、自分が見ている自己像が他人が見ている自分のイメージそのものだと思い込んだり、緊張で「いつもとは違う感覚」を体験しているのだから、周囲から自分が「ヘンな感じ」に見られているだろうと思い込む。

 本書ではじっさいの認知療法の用例がくわしいわけではない。不安の気持ちは長つづきせず、10分から15分がピークで、その後はしだいに和らいでゆくといわれている。また不安な気持ちを完全になくそうとは考えないといわれている。

 まあもっとくわしいワークブックのような本はほかに求めたほうがいい本である。



対人関係療法でなおす 社交不安障害社会不安障害―社交恐怖の病理を解く (ちくま新書)精神科医が書いた あがり症はなぜ治せるようになったのか ―社会不安障害(SAD)がよくわかる本人の目が怖い「社会不安障害」を治す本―現代人に急増する「心の病」への処方箋 (ビタミン文庫)これって性格?それとも「社交不安障害」? 正しい理解と効果的な治療法 (心のお医者さんに聞いてみよう)


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